COLUMN
その気づき、書き留める前に忘れていませんか——学び台帳という記憶装置
「これ、前にも同じ失敗をした気がする」——作業のやり直しを指示されて、そう思ったことがある。
原因をたどると、前に気づいたはずのことがどこにも書き残されていなくて、同じ落とし穴に二度落ちていた。
一度きりの手直しなら笑い話で済むけれど、繰り返すとなると話は別だ。
気づいたことをその場限りにせず、次に同じ作業をする自分に手渡す仕組みが要ると思った。
うちの開発環境では、資料作成・コーディング・コンテナ開発といったチームごとに「学び台帳」という一枚のファイルを持たせている。
チェックリストに載っていない新種の欠陥に気づいたときや、指示をやり直された場面に出会ったとき、症状と対策を1行だけ書き足す運用にした。
台帳は最初から完璧な規約集を目指したものではなくて、経験のかけらを溜めておくための場所に近い。
溜めるだけでは意味がないので、同じ症状が3回以上出てきたり、致命的だと判断したものは、台帳から恒久ルールへ昇格させると決めている。
読む・捕える・昇格という3段階を回すことで、台帳が際限なく膨らむのを防ぎつつ、本当に繰り返す問題だけがルールとして固定化されていく。
1回しか出ていない指摘まで全部ルール化してしまうと、今度はルールの数が増えすぎて誰も読まなくなる。
線引きを「再発したかどうか」に置いたのは、そのためだ。
この考え方は、コンテナに搭載しているAIフィードバックの仕組みとよく似ている。
チャットの応答をその場で評価するだけでなく、優れたやり取りをFAQやナレッジへ昇格させる導線を用意しておくことで、一度きりのやり取りが次の回答の精度に還元される。
気づきをその場で消費してしまうか、次につながる形で残せるかで、同じ時間をかけた作業の価値はまったく違ってくると思う。